表具師 玉木楽山堂


屏風について

このページでは、普段あまり耳にする機会が少ない屏風の各部名称とその説明、屏風の数え方、屏風の種類といった屏風に関することがらを集めました。

屏風の各部名称とその説明


表装 屏風模式図

図 屏風の各部名称

錺金具(かざりかなぐ)
本来は、保護補強に用いる金具のことですが、時代とともに主目的が装飾に移りました。錺金具(かざりかなぐ)は装飾性の高い金具です。

(ふち)
屏風(ふち)は垂直椽を(たて)椽、水平椽を(よこ)椽(あるいは上下椽)と呼びます。そして、堅椽の付く(せん)を特に扉と呼びます。横椽のうち扉部のものを合掌(がっしょう)椽、扇部のものを中小(なかこ)椽といいます。

大縁(おおべり)小縁(こべり)
屏風の(へり)は、一般に本紙と(ふち)の間に布で装飾して貼るもので、これには大縁と小縁があります。なお、縁は手当たりに対する保護を兼ねるものです。

●扉、(せん)
屏風は一面一面が繋がっていて折り畳みできることから、(おうぎ)に見立てて(せん)と呼びます。そして、(たて)椽の付く(とびら)を特に扉と呼びます。


●入りオゼ、出オゼ
入りオゼは扇と扇の連結部の奥まった部分です。出オゼは扇と扇の連結部が前にある部分です


屏風の数え方


屏風の一面を「(せん)」と呼びます。そして、(せん)を連結したときには「(きょく)」という語を用います。例えば、二扇屏風であるなら二曲屏風、六扇屏風であるなら六曲屏風といいます。そして古くは六扇を併せて「一(じょう)」、二帖併せて一具(ひとよろい)と数えました。しかし、江戸時代からは一帖を半双(はんそう)、一具を一双(いっそう)と呼ぶようになりました。例えば、六曲屏風の場合は、六曲屏風一帖を半双、六曲屏風二帖を一双といいます。



(つがい)


(つがい)は扉と扇、もしくは扇と扇とを連結させる役割を果たす部位をいいます。この番には紙製、紐製、金属製があり、用途により使い分けます。紙製の番は、強靭な和紙でできています。このことにより、屏風の扇と扇の連結部に見られた隙間を無くすことが可能になり、大画面構成の絵画等も綺麗に繋がった状態で見ることができるようになりました。紐製の番は、屏風の扇の周りに縁が付いています。その椽と椽を紐により連結しています。金属製の番は、一般に形が蝶に似た2枚折りの金属製接続用金具のことです。

屏風の種類


屏風には用いられる用途や場所に合わせて、さまざまな種類や大きさがあります。今日ではこれらの用途以外にも、インテリアとして用いられることが多くなってきました。

1.本間(ほんけん)屏風

本間と呼ばれる屏風は主に座敷で用いられることから、その格は他の屏風と比較すると高いものであるとされてきました。この本間屏風には本間六曲(ほんけんろっきょく)屏風と本間二曲(ほんけんにきょく)屏風があります。そして、本間六曲屏風は本六(ほんろく)屏風、あるいは単に本六と略称することが普通であり、同様に本間二曲屏風は本二(ほんに)屏風、あるいは単に本二と省略します。

1‐1.本間六曲(ほんけんろっきょく)屏風

本間六曲(ほんけんろっきょく)屏風の丈寸法は鴨居下までといわれています。これは、本間六曲屏風は来客の際に平常使用されたり、内法幅(うちのりはば)(開口部幅)2間に建て込んだ襖の目隠しにするため、襖の前に平らに伸ばし立てて使用できるように製作するという口伝に由来します。そして、六曲は一双という単位で屏風装することが通例です。これは、12枚でワンセットの月次絵(つきなみのえ)を多く屏風に仕立ててきたことからの伝統でしょう。
月次絵(つきなみのえ):毎月の行事や風物を順に描いた絵。


1‐2.本間二曲(ほんけんにきょく)屏風

本間二曲(ほんけんにきょく)屏風の丈寸法も鴨居下までといわれています。本間二曲屏風は本間六曲屏風と異なり襖の目隠しにするといった口伝はなく、主に隅立用として防風や装飾目的で用いられてきました。

2.金屏風

晴れの舞台を彩る、装飾品として受け継がれた金屏風です。現在、結婚式の披露宴など「ハレの場所」の主役を演出するために欠かせない道具として利用されています。六曲屏風が一般的に利用されます。

3.勝手(かって)屏風、大勝手(おおかって)屏風

竪長(たてなが)の二曲屏風は一般的に「勝手(かって)屏風」と呼ばれます。勝手屏風とは勝手許(かってもと)に立てる屏風です。この勝手許とは台所に関係のあることをいい、すなわち勝手屏風とは今日、座敷での下座、あるいは客人のあるとき台所へ向かう通路を隔てたいときなどに用いるものです。また、茶室の勝手許に立てて仕切りとしても用いられました。なお、6尺×3尺の二曲屏風は特に「大勝手(おおかって)屏風」と呼ばれます。

4.風炉先(ふろさき)屏風

風炉先(ふろさき)屏風とは風炉先と略称する、茶座敷で用いる二曲の屏風を指します。この屏風は風炉先と書くことからわかるように風炉*1の先(向こう)へ立てる、広間で道具畳*2の結界(境目)の役目を果たすとされる道具屏風です。風炉先は風炉に風が入らないようにすること、そして灰が室内に飛散することを防止する防風目的で用いるものともされていますが、これは元来が道具畳に襖、あるいは戸や障子が面していて、これらが開けられるおそれのある場合に遮断目的で設置するものであり、したがって小間や回し壁、風炉先窓を有する部屋には用いません。なお、風炉先屏風は6畳間以上では必要不可欠のものとされ、部屋全体を引き締めるためにも用いられます。

*1 風炉:茶室で用いる、釜をかけ湯を沸かすのに用いる移動式の炉。前後に風通しが設けられていることから、風炉と呼ばれます。

*2 道具畳:点前畳、亭主畳ともいい、茶室で茶道具が置かれ、主人(亭主)が点茶する場所の畳。

5.利休(りきゅう)屏風

利休(りきゅう)屏風は開いて5尺角の寸法に仕上げる屏風を指します。

6.(まくら)屏風

(まくら)屏風は枕許に立てる二曲の屏風です。これは防寒および防風の必要性から自然に生まれた什器であり、定寸法はありません。枕許に立てて就寝時、風除け、仕切りとして用いられてきました。昔は二曲に限らず、丈の低いものを全て枕屏風と呼んだようです。これらも枕許で使用したものであったからでしょう。また、身につけるものを仮に掛けたり、和歌や絵画などを貼って飾ったりと、昔から生活の中で色々な利用をされてきました。





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